賃金制度を変更する場合の留意点

不利益変更となる場合

従業員が少ないうちは明確な賃金制度を設けていないことが多く、経営者が場当たり的な基準で賃金を支給しているケースが見受けられますが、やがて従業員が増えていくと場当たり的な支給にも限界がくるので、きちんとした賃金制度をつくる必要が出てきます。

あるいは、賃金制度があっても、経営環境の変化によって手当を新設または廃止したりすることもあるでしょうし、基本給を引下げて歩合給などを導入することもあるでしょう。

このように、賃金制度の新設や変更により現行の賃金支給基準を変更する際には注意が必要です。というのは、労働条件の変更には労使の合意が必要なため、経営者が従業員の合意を得ることなく一方的に変更することはできないからです。従業員が有利になる変更の場合は問題になること(合意を得られないこと)は考えにくいですが、不利になる変更の場合には合意を得られないことも考えられます。

合意を得るために

従業員にとって、賃金は重要な労働条件のひとつです。不利益変更に際し従業員の合意を得るためには、変更の必要性について理解してもらう必要があります。また、急な変更も受け入れがたいでしょうから、なぜ変更する必要があるのか、その理由を事前に時間をかけて説明する必要があります。経営状況の悪化を理由とする場合には、役員報酬の減額など不利益変更の前にすべきこともあるでしょう。

また、いきなり変更するのではなく、経過措置を設けるなど段階的に変更することで合意が得られやすくなります。重要なのは、一方的に変更するのではなく、従業員の立場になって考えてみることです。

従業員の合意を得られたら、後々のリスクを回避するために合意書など書面にしておきましょう。

就業規則の変更による場合

労働条件の変更には労使の合意が必要ですが、一定の要件を満たす場合に例外的に就業規則を変更することで労働条件を変更することが可能です。

一定の要件とは、①変更後の就業規則を周知すること、②就業規則の変更が合理的なものであること、です。

②の就業規則の変更が合理的なものであるかどうかは、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして判断されます。

なお、常時使用する従業員が10人以上いる場合、就業規則の変更について労働基準監督署に届け出なければなりません。