オープンブックマネジメントの有効性

オープンブックマネジメントとは

上場企業と大会社は金融商品取引法や会社法で損益計算書を公開するよう決められていますので、従業員が自社の経営成績を知ることが可能です。一方、中小企業では損益計算書の公開義務がないため、貸借対照表は見ることはできても経営成績を知ることはできません。

よって、売上や利益、コストに対して経営者と従業員との間にギャップが生じることになります。経営者が危機感を持っていても、従業員は職場の雰囲気などで何となく肌感覚で感じることはできても具体的に数字としてどれほどの危機感なのかは理解できません。その結果、「うちの従業員はやる気がない、危機感が感じられない」などといった言葉が出たりします。

また、会社に利益が出ても従業員にはそれがどのように使われるか分かりません。実際は投資や将来のリスクに備えて内部留保したりしていても、従業員は「社長が儲かるだけ」と感じているかもしれません。

これらのギャップを埋め、経営者と従業員がひとつになって事業の継続・発展を図る手法のひとつに、オープンブックマネジメントがあります。

オープンブックマネジメントとは、自社の経営成績を従業員に公開することで従業員の経営参画意識を高めて経営に役立てようという考え方のことです。

オープンブックマネジメントのメリット

経営成績が喜ばしくない場合や接待交際費を多額に使っている場合など、それらを知られることで後ろめたさを感じてしまいますので、オープンブックマネジメントに抵抗を感じる経営者もいると思います。

自社が危機的状況にあることを知れば、従業員が辞めてしまうかもしれません。特に優秀な従業員ほどその可能性は高くなりますので、そういった意味でもオープンにすることをためらいがちとなります。

しかし、オープンブックマネジメントには、①従業員のモラールが高まる、②経営者の意識が高まる、③数字を使ったコミュニケーションが促進される、といったメリットがあり、その結果が業績向上につながることとなります。

オープンブックマネジメントのポイント

オープンブックマネジメントを最大限に機能させるためには、経営者はもちろんのこと従業員も数字の読み方を理解している必要があります。損益計算書を公開してもその仕組みを理解していなければ意味がありません。そのため、ある程度の会計に関する能力開発が必要です。

自社の状況を把握できれば、どの程度売上を上げる必要があるのか、コスト削減のために何をすべきなのか等、すべきことが明確になります。ここで、従業員が積極的に取り組むようにするためには、権限移譲が重要となります。従業員に裁量がないと言われたことしかできないため、指示待ち人間となってしまいます。自分で考え行動する積極的な姿勢を引き出すためには、従業員のレベルに応じた権限移譲が重要となります。

組織が機能するためには①共通目的、②貢献意欲、③コミュニケーションが求められますが、オープンブックマネジメントにより、会社が達成すべき数値目標について経営者と従業員がコミュニケーションをとりながら取り組むことが可能となります。貢献意欲を引き出すためにはいくつか方法がありますが、そのひとつにインセンティブ(成果給や賞与など)の付与があり、オープンブックマネジメントを効果的に機能させるためにもインセンティブの付与がポイントとなります。

たとえば、目標粗利益を達成することができた場合、それを超えた部分の一定割合を従業員に還元するようにすれば、従業員はどれだけ頑張ればインセンティブを受けることができるか知ることができるため、透明性・納得性が高まり従業員のモラールを向上させることができます。