中小企業における健康経営

健康経営とは

健康経営という言葉を耳にします。これは健康経営研究会の登録商標で、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを意味しています。

私なりに解釈すると、「従業員の健康を気にかけることで従業員本人のみならず企業にとってもプラスにつなげていく経営」ということだと思います。

この健康経営という考え方が生まれた背景には、少子高齢化や生活習慣病の増加が挙げられます。国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、2015年の生産年齢(15~64歳)人口は77,282千人、老年(65歳以上)人口は33,868千人ですが、2040年にはそれぞれ59,777千人、39,206千人になると予想されており、生産年齢人口が20%以上減少し老年人口が15%以上増加する計算となっています。これは今後ますます人材の確保が難しくなることを意味しています。

また、人間誰しも老いとともに病気やケガをしがちとなりますし、近年の生活習慣病の増加もあって医療費は増加傾向にあり、健康保険料の負担は年々大きくなっています。

このような背景から、従業員の健康を配慮することで労働力人口の減少や医療費の負担増加への対応を図るとともに生産性の向上等の効果を得る「健康経営」という考え方が生まれたといえるでしょう。

健康経営の効果

健康経営で得られるメリットには、下記のものがあります。

1 生産性の向上
企業が従業員のことを気にかければ、従業員も何かしらそれに対して報いようと思う気持ちが生まれるでしょう(返報性の原理)。従業員の企業に対するモラールが向上すれば、生産性の向上や定着率アップ(離職率低下)につながります。

2 企業イメージの向上
健康経営を行っていることを対外的に発信し「従業員のことを気にかけている企業」ということをアプールすることで、企業のイメージが向上します。労働力人口の減少は需要(従業員の募集数)が供給(求職者数)を上回ることを意味しますので、働き手が企業を選ぶようになります。企業イメージの向上は、人が集まらない企業が増えている中で人材の確保(優秀な人材の獲得)がしやすくなります。

3 健康保険料の負担軽減
健康な人が増え医療機関を利用する回数が減れば、医療費の増加を抑えることができます。健康保険料は医療費に基づいて決定されますので、医療費が減れば健康保険料の負担軽減につながります。

健康経営の取組

経済産業省が中小企業に実施したアンケートでは、健康経営に取り組んでいない要因として「ノウハウがない」、「どのようなことをしたらよいか分からない」が上位に挙げられています。

健康経営の取組は様々ですが、中小企業においては、まずは健康診断の受診の徹底が挙げられます。安全衛生法により企業は従業員に1年以内ごとに1回、定期健康診断を受診させなければなりませんが、これ以外に生活習慣病予防検診等の健康診断の受診も考えられます。

また、職場での禁煙や分煙対策を進めるのもよいでしょうし、ラジオ体操やストレッチなど体を動かすこともよいでしょう。工夫次第でお金をかけずに始めることも可能です。

協会けんぽでは、各都道府県の支部ごとに健康経営を推進しています。愛知県では企業に対して健康宣言を募集しており、応募すれば「健康宣言チャレンジ認定証」が発行されます。また、取組が優秀な企業はハローワークの求人広告に「健康取組優良事業所」と表記できたりするなどの特典があります。

健康経営に取り組む企業が増えています。大企業では福利厚生でスポーツクラブが利用できる等の取組を行っているところもありますが、中小企業においてもできることから始めてみてはいかがでしょうか。