全国各地の商工会・商工会議所でキャッシュレス決済に関するセミナーが開催されていますね。
飲食店や小売店を営む方の中には、キャッシュレス決済を導入しようかどうか迷っている方も多いかと思います。
結論から言いますと、キャッシュレス決済にまったく対応しないのは(一部の場合を除いて)好ましくないでしょう。
以下では、その理由について考察してみたいと思います。
キャッシュレス決済のメリット・デメリット
事業者側からみたキャッシュレス決済のメリットとデメリットについて整理します。
キャッシュレス決済のメリット
- つり銭を準備する手間が少なくなる
- レジを締める時間が短縮される
- 現金を盗まれるリスクが下がる
- 客単価が向上する
- 売上機会が増加する
1と2は生産性の向上につながりますので、これからの人手不足時代を考えると大きなメリットと言えます。
「現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査」によれば、レジ現金残高の確認作業のために1日あたりレジ1台につき平均25分費やしています。30日換算だと12時間30分になりますので、馬鹿になりません。
4の客単価向上ですが、これは購買点数が増加することによるものです。消費者側からみたキャッシュレス決済のデメリットのひとつに、「使いすぎてしまうから」というのがあります。
つまり、キャッシュレス決済だと手持ちの現金がなくても商品・サービスの購入が可能になるため、ついつい買ってしまう傾向があるということです。
5の売上機会の増加は、皆様も消費者の立場として「現金しか使えない飲食店だったので違う店を探した」というような経験があるのではないでしょうか?
今後、キャッシュレス決済が普及していく中で現金払いしか対応しなければ、このような機会損失はますます増えることになるでしょう。
キャッシュレス決済のデメリット
もちろん、キャッシュレス決済にもデメリットは存在します。
- カードリーダーの購入など導入コストがかかる
- 決済手数料や入金手数料等のランニングコストがかかる
- 現金化までに時間がかかる
- 操作を覚える必要がある
決済事業者による普及促進キャンペーンにより、現在は1や2のコストをかけずにキャッシュレス決済を導入することも可能ですが、いつかは決済手数料等のランニングコストは有料になるでしょう。
また、近年では入金サイクルも短くなってきているとはいえ、リアルタイムで現金が手に入る現金払いには敵いません。
キャッシュレス決済には以上のようなデメリットが存在します。しかし、それでもキャッシュレス決済は導入すべきと考えます。
なぜなら、キャッシュレス決済を導入しなければお客様に損をさせることになるからです。
キャッシュレス・消費者還元事業
消費税率が引き上げられる2019年10月1日から2020年6月30日までの9か月間について、消費者がキャッシュレス決済手段を用いて中小・小規模の小売店・サービス業者・飲食店等で支払いを行った場合、個別店舗については5%、フランチャイズチェーン加盟店等については2%が消費者に還元されます(キャッシュレス・消費者還元事業)。
ポイント還元の対象となる価格が税込価格の場合、消費税率が10%だとすると本体価格10,000円の商品を購入すれば、550円分のポイントが還元されることになります。
この低金利の時代に5%のインパクトは大きいですよね。
キャッシュレス決済を導入していない場合、お客様に商品を購入いただいても5%の恩恵を受けていただくことはできません。
もちろん、5%ポイント還元に関係なく、自店の商品に価値を感じて購入されるお客様もいらっしゃるでしょう。
しかし、そのようなお客様であれば、なおさら損をさせてはいけないのではないでしょうか。
お客様サービスの視点でいうと、キャッシュレス決済は(手数料等のコスト発生による利益率低下を考慮しても)導入すべきと言えます。
顧客との関係性が低かったり商品自体の競争力が低かったりするほど、キャッシュレス決済を導入していなければ顧客が他店に流出してしまいますし、キャッシュレス決済導入による利益率の低下は売上向上でカバーすればよいのです。
まとめ
キャッシュレス決済には、生産性向上や売上機会の増加といったメリットがある一方で、コスト増加やキャッシュフロー悪化等のデメリットがある。
しかし、キャッシュレス・消費者還元事業が行われることを考えると、お客様サービスの視点からはキャッシュレス決済を導入すべきである。